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2026.01.26

民泊事業譲渡の税金:手残りを最大化するための実務知識と計算の罠

民泊の事業譲渡を検討する際、多くのオーナーが「いくらで売れるか」にばかり目を奪われ、最終的に手元に残る金額、つまり「税引き後のキャッシュ」のシミュレーションを疎かにしがちです。2016年からこの業界で多くの物件の立ち上げと撤退を見てきましたが、税金の知識がないまま契約書に判を突いた結果、翌年の確定申告で「こんなに納税するのか」と愕然とするケースを何度も目撃してきました。

事業譲渡は、単なる不動産売買ではありません。許可、営業権、設備、そしてこれまでの運営実績という「目に見えない資産」を売る行為です。そのため、かかる税金の種類も多岐にわたり、個人か法人かによっても戦略は180度変わります。ここでは、現場の生々しい実例を交えながら、民泊売却に伴う税務の急所を整理していきます。

個人と法人でこれほど違う?利益にかかる税金の正体

まず把握すべきは、譲渡益(売却価格から経費を引いた利益)に対して、どのような税金がかかるかです。ここは個人事業主として運営しているか、法人として運営しているかで、適用されるルールが根本から異なります。

運営主体 課税の種類 税率の目安 現場での留意点
個人事業主 譲渡所得または事業所得 15%~45%(累進課税) 譲渡所得(分離課税)として扱えるか、総合課税になるかが分かれ目
法人 法人税・法人住民税 実効税率 30%前後 他の事業の赤字と相殺できるため、全社的な損益通算が可能

個人事業主の場合、物件そのもの(不動産)を売るなら「譲渡所得」として分離課税になりますが、運営権や家具などの事業資産を売る場合は「総合課税」の対象となるのが一般的です。つまり、本業の収入や民泊の運営利益と合算されるため、売却額が大きいと所得税率が跳ね上がり、利益の半分近くが税金で消えるリスクがあります。

一方、法人の場合は「事業譲渡益」も通常の利益として扱われます。もし他にも事業をやっていて、そちらで赤字が出ていれば、売却益と相殺して納税額を抑えることができます。この「損益通算のしやすさ」は、法人の大きな強みです。

消費税の罠:売却額の10%が消える「見落とし」の恐怖

実務上、最もトラブルになりやすく、かつオーナーが忘れがちなのが「消費税」です。民泊の宿泊料収入は「住宅の貸し付け」ではないため、原則として消費税の課税対象ですが、事業譲渡そのものにも消費税がかかります。

譲渡対象となる資産のうち、何に消費税がかかり、何にかからないのかを整理しましょう。

  • 課税対象:営業権(のれん)、家具・家電、備品類、建物(建物部分のみ)
  • 非課税対象:土地、敷金返還請求権、未経過分の保険料

例えば、譲渡代金が2,000万円で、その内訳のほとんどが営業権や設備である場合、買い手から別途200万円の消費税を受け取る必要があります。これを「税込み2,000万円」で契約してしまうと、オーナーは自分の懐から200万円を納税することになり、実質的な手残りが大幅に減ってしまいます。さらに恐ろしいのは、売主が「免税事業者」だと思い込んでいたケースです。売却した年の売上が1,000万円を超えれば、2年後には課税事業者になります。この時間差攻撃による納税義務を見落とすと、廃業後の資金繰りに致命的なダメージを与えます。

営業権(のれん)と税務:買い手と売り手の損得勘定

民泊M&Aにおいて、価格の大部分を占めるのが「営業権(のれん)」です。これは「二度と取れない許可」や「高評価のレビュー」に対するプレミアム価格ですが、税務上も非常に重要な役割を果たします。

買い手にとって、営業権は「無形固定資産」として計上され、税務上は5年間(60ヶ月)で均等償却することが認められています。つまり、買い手は支払った営業権の額を5年にわたって経費にできるため、大きな節税メリットがあります。この「買い手側の節税メリット」を理解していれば、交渉の際に「これだけの節税効果があるのだから、この価格は妥当だ」というロジックを展開することが可能です。

営業権の額があまりに実態とかけ離れて高額な場合、税務署から「寄付金」や「役員賞与」とみなされ、経費として認められないリスクがあります。適正なバリュエーション(価格算定)のエビデンスを残しておくことが、後の税務調査対策として不可欠です。

印紙税と諸経費:意外とかさむ端数コスト

契約書に貼る「収入印紙」も、事業譲渡の金額が大きくなれば無視できない金額になります。事業譲渡契約書は「第1号文書」に該当し、契約金額に応じて印紙代が決まります。

  1. 100万円超〜500万円以下:2,000円
  2. 500万円超〜1,000万円以下:1万円
  3. 1,000万円超〜5,000万円以下:2万円

また、仲介手数料や弁護士・税理士への相談費用も「譲渡費用」として利益から差し引くことができます。現場での葛藤として、これらの経費を「いつ、どのサイフから出すか」という問題があります。譲渡完了前にお金が出ていくため、手元のキャッシュが心許ないオーナーにとっては、これらの諸経費すら重荷に感じることがあります。しかし、ここをケチって適当な契約書で済ませると、後に数倍の税金やトラブルとなって跳ね返ってくるのがこの業界の常です。

現実と教科書の乖離:節税対策より「スピード」が優先される理由

教科書的な節税対策では「利益が出る時期をずらしましょう」「法人化してから売りましょう」といったアドバイスがなされます。しかし、民泊の現場は生き物です。インバウンドの波が来ている今、あるいは賃貸契約の更新が迫っている今、節税のために数ヶ月待つことで「買い手がいなくなる」リスクの方が圧倒的に大きいです。

「税金を100万円減らすために売却時期を半年遅らせた結果、ブームが去って売却価格が500万円下がった」というのでは本末転倒です。現場感覚としては、税務の最適化は重要ですが、それ以上に「市場が求めているタイミングで、確実に着金させること」を最優先すべきだと考えます。そのためには、売却検討の初期段階で税理士に相談し、複数のパターンで「手残り額」を算出しておくフットワークの軽さが求められます。

最後に

民泊事業の譲渡における税金の話は、知っているか知らないかだけで、数百万円単位の差が出る厳しい世界です。個人と法人の違い、消費税の扱い、そして営業権の償却。これらをすべて一人で把握し、最適なタイミングで取引を進めるのは至難の業です。大切なのは、あなたがこれまで心血を注いできた事業の価値を、税金という「出口の壁」に阻まれることなく、最大化して手元に残すことです。もし、今の自分の状況でどれくらいの税金がかかるのか、どうすれば最も賢く売却できるのか迷っているのであれば、専門的な知見を持つパートナーの扉を叩いてみてください。

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  • 幅広いネットワークと信頼性:独自のネットワークを活用し、あなたの事業価値を正当に評価し、消費税や営業権の扱いについても理解のある「信頼できる買い手」を迅速にマッチングします。実績豊富なプラットフォームだからこそ、情報の秘匿性を保ちながら、最適な条件での譲渡を実現します。
  • 継続的なフォローアップ:取引が完了した後も、継続的なサポートを提供します。物件の運営や管理に関するアドバイスはもちろん、将来の再投資や節税対策、次の売却・購入に関する相談にも柔軟に応じ、あなたの長期的なビジネスの成功を共に描きます。

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