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2026.01.30

赤字の民泊を売却する:損切りか、それとも再生か?逆境を資産に変える実務

民泊を運営していて、収支が赤字に転じている。この状況で売却を考えるのは、オーナーとして非常に苦しく、時には敗北感すら覚える決断かもしれません。しかし、2016年からこの業界の浮き沈みを最前線で見てきた私から言わせれば、「赤字だから売れない」というのは完全な思い込みです。むしろ、赤字の今こそが、これ以上の損失を防ぎ、あなたの手元にキャッシュを残すための「攻めの出口戦略」を打つべきタイミングだと言えます。

プロの投資家や事業会社にとって、現在の赤字は「伸び代」に見えることがあります。あなたが抱えている「赤字の宿」は、適切な買い手に出会えば「宝の山」に変わる可能性がある。ここでは、赤字物件を売却するための戦略と、現場でのシビアな査定の裏側を、忖度抜きで深掘りしていきます。

赤字でも「買い手」がつく3つの理由:許可と時間の価値を売る

「毎月お金が減っている物件を誰が買うのか」と疑問に思うかもしれません。しかし、M&Aの世界では、現状の収支以上に価値を持つ「資産」が民泊には眠っています。投資家は今の赤字ではなく、自分が運営した後の「黒字化した姿」を見ています。

「二度と取れない許可」という圧倒的な無形資産

旅館業許可や特定の自治体の民泊許可は、今や取得難易度が劇的に上がっています。2016年当時は保健所も手探りでしたが、今は条例がガチガチに固められ、新規で申請すれば数ヶ月の期間と多額のコンサル費用、そして数百万単位の消防設備投資がかかります。買い手からすれば、赤字であっても「許可付きの箱」を即座に手に入れられることは、時間とリスクの短縮という巨大なメリットになります。特に、新規許可が下りない制限区域内の物件であれば、赤字であってもプレミアム価格がつくことすらあります。

オペレーションの改善余地:プロが欲しがる「伸び代」

あなたが運営して赤字なのは、立地のせいではなく「運営手法」のせいかもしれません。ぶっちゃけた話、清掃費が高すぎたり、OTA(予約サイト)のプロフ設定が甘かったり、ダイナミックプライシングが導入されていなかったりするケースが多々あります。自社で清掃チームを持ち、マーケティングノウハウがある事業会社にとって、今の赤字は「自分たちが運営すれば即座に黒字化できる」という確信に変わります。彼らは「収益」を買うのではなく「改善の余地」を買っているのです。

不動産としての担保価値と将来のインバウンド需要

賃貸物件ではなく所有物件の場合、民泊としての収支が悪くても、不動産市場全体で見れば価値があるケースがあります。あるいは、インバウンドのさらなる回復期において、現時点の赤字を織り込み済みで「仕込み」として買いたい投資家は常に存在します。彼らは数年単位の長期スパンで収支を見ているため、目先の数ヶ月の赤字は大きな問題ではないという視点を持っています。

赤字物件の「売却価格」はどう決まるのか?現場の査定ロジック

通常、黒字物件は「営業利益の2〜5年分」で査定されますが、赤字物件の場合は算出方法が異なります。収益還元法が使えないため、主にコストの積み上げとポテンシャルで評価されることになります。ここを理解しておかないと、買い手の指値(値下げ交渉)に言い返せなくなります。

査定項目 評価の考え方 現場でのリアルな価値
初期投資コストの残価 内装費、家具、家電の時価評価。 中古品としての価値ではなく、即営業可能な設備としての価値。
許可取得代行価値 新規で許可を取る際にかかる手間と費用の代替値。 消防設備代+コンサル費+数ヶ月の空家賃相当分。
敷金・保証金の承継 賃貸物件の場合、預けている保証金の権利。 返還される権利そのものを譲渡代金に乗せる。
アカウントの評価 レビュー数やスーパーホストなどの称号。 星の数や良いレビューは金で買えない価値として加点。
赤字物件の売却は「収益の売却」ではなく「初期コストの回収」と「撤退費用の回避」が主な目的となります。本来、数百万円かかる撤退費用をゼロにし、さらにプラスで数十万円でも回収できれば、それは実質的に大きな利益を確保したことと同じだという視点を持ってください。

赤字を隠さない:誠実な開示が高値成約を引き寄せる

現場の葛藤として、「赤字であることを伝えると買い叩かれる」という不安があるでしょう。しかし、数字を誤魔化すのは最悪の選択です。デューデリジェンス(詳細調査)で必ず判明しますし、その瞬間に信頼は失墜し、交渉は破談します。ぶっちゃけ、買い手は最初から「赤字なんじゃないか」と疑ってかかっています。

重要なのは、赤字の「理由」を明確に言語化することです。これによって、買い手はリスクを計算できるようになります。以下のリストを参考に、自分の物件の赤字要因を整理してみてください。

  • 本業が多忙で、ゲストへのメッセージレスポンスが遅れ、成約率が低下している。
  • 運営代行会社に丸投げしており、代行手数料と清掃費が適正価格を大きく上回っている。
  • 物件が古くなり、内装のアップデートができておらず、近隣の新築競合に埋もれている。
  • 清掃クオリティの維持ができず、レビュー評価が下がり、検索順位が落ちている。
  • 住宅宿泊事業法(180日規制)の影響を強く受け、稼働日数が制限されている。

このように原因を特定して伝えれば、買い手は「清掃を自社に変えれば利益が出る」「内装をリノベすれば単価を上げられる」という改善シナリオを描きやすくなります。弱点を見せることは、プロの買い手に対して「改善のチャンス」を提示することと同義なのです。

現場のリアル:廃業するくらいなら「1円」でも売るべき理由

赤字に耐えかねて「もう廃業してしまおう」と考える前に、現実的なコストを計算してみてください。民泊の撤退には、想像以上のキャッシュが必要になります。私の知る限り、1Kの物件でも撤退には50万円以上、一棟貸しなら数百万円が吹き飛びます。

  1. 賃貸借契約の解約予告期間(3〜6ヶ月分)の空家賃の支払い。
  2. 家具、家電、リネン類、アメニティの産業廃棄物処分費用。
  3. 内装の原状回復工事費用(民泊利用は摩耗が激しいため、敷金では足りないことが多い)。
  4. OTA(予約サイト)の先行予約をキャンセルすることによるペナルティ料金。

これらを合計した「撤退コスト」と、売却した場合の「手残り」を比較してください。もし、事業譲渡によってこれらを買い手に引き継いでもらい、かつ譲渡対価が手に入れば、廃業するよりも数百万円単位で手残りが変わります。「赤字だから恥ずかしい」という感情を捨て、経済合理性で判断することが、経営者としての最後の、そして最大の決断になります。1円でもプラスで売れるなら、それは「負け」ではなく「賢い撤退」です。

買い手がチェックする「赤字物件の健康診断」項目

赤字物件の売却交渉において、買い手が必ずチェックする項目があります。ここを事前に整理しておくだけで、交渉のスピードは格段に上がります。現場では「資料がない」というだけで、買い手候補が去っていくことが多々あります。

  • 直近1〜2年分の月別収支報告書(売上、清掃費、光熱費、代行費、家賃の内訳)。
  • 過去1年分の稼働率推移とADR(客単価)のデータ。
  • OTA(Airbnb等)のアカウント評価とレビュー履歴。
  • 賃貸借契約書および民泊・旅館業許可証の写し。
  • 消防点検や保健所の立ち入り調査の結果。

「赤字だから見せたくない」と思う資料こそ、買い手は欲しがります。彼らは「何がダメだったのか」を確認することで、自分が運営した際の成功確率を見極めたいのです。不都合な事実もあらかじめ開示しておくことで、売却後の損害賠償リスク(契約不適合責任)を回避することにも繋がります。

戦略的イグジット:赤字物件を高く売るための「磨き上げ」

売却を検討し始めてから実際に成約するまでの数ヶ月間、ただ漫然と赤字を垂れ流すのはもったいない。この期間に少し「磨き上げ」をするだけで、売却価格を底上げできる可能性があります。現場で実践できる、コストをかけない磨き上げの視点を提案します。

清掃コストの一時的な見直し

売却時の査定で、運営費用の大半を占める清掃費が「異常に高い」とマイナス評価になります。知人の業者に依頼したり、自分で一部を行うなどして、一時的にでも「適正な利益が出る体質」を見せる努力が必要です。これだけで、買い手がシミュレーションする将来の利益予測が好転します。

レビューの質を最後に引き上げる

辞めると決めた瞬間にサービスが疎かになるオーナーがいますが、これは逆効果です。売却直前の1〜2ヶ月で「星5」のレビューを積み重ねるだけで、アカウントの価値は上がります。買い手は「最近の評価」を最も重視するからです。最後まで丁寧にゲストを迎え、高評価を維持することが、譲渡価格へのボーナスとなります。

予約管理を徹底し「確定した将来売上」を見せる

数ヶ月先まで予約が埋まっている物件は、赤字であっても買い手にとって安心感があります。「譲渡直後からこれだけの売上が見込めます」という実績値は、何よりも強力な交渉材料になります。新規の予約を止めず、むしろ積極的に取りに行く姿勢が必要です。

現場の葛藤:大家(家主)との交渉をどう切り抜けるか

賃貸物件で民泊を運営している場合、事業譲渡の最大のハードルは「家主の承諾」です。民泊運営を許可してくれた家主であっても、新オーナーへの切り替えを嫌がるケースは少なくありません。ぶっちゃけ、ここをミスすると売却そのものが頓挫します。

家主への交渉で必要な視点は、「家主のメリット」を提示することです。

  • 今のオーナーが赤字で廃業すれば、家主は次のテナントを探す空室リスクを負う。
  • 事業譲渡であれば、家賃の入金が途切れることなく、スムーズに新オーナーへ移行できる。
  • 新オーナーが実績のある事業会社であれば、個人オーナーよりも家賃支払いの信頼性が高まる。
  • 居抜きで引き継ぐため、原状回復をめぐるトラブルも回避できる。

「自分が辞めたいから」という理由ではなく、「物件の健全な運営を維持するために最適な後継者を見つけた」というストーリーで話を持っていくのが得策です。時には、譲渡価格の一部を「名義変更手数料」として家主に提供するなどの柔軟な対応も、現場では必要になることがあります。

赤字脱出のラストチャンス?売却と並行して検討すべきこと

もし、売却の決断がまだ揺らいでいるのであれば、売却活動と並行して「運営モデルの転換」を模索してみるのも一つの視点です。最近の現場トレンドでは、以下のような「民泊以外の活用」を組み合わせることで赤字を脱出するケースも見られます。

  • マンスリーマンションや中長期滞在(デジタルノマド向け)への切り替え。
  • 撮影スタジオやレンタルスペースとしての時間貸し併用。
  • 特定の国籍やターゲットに特化した、コンセプトルームへの一部改装。

こうした試みをして、少しでも数字が上向けば、それはそのまま売却価格の上昇に繋がります。もちろん、これらにも追加のリソースがかかるため、自分の余力と相談しながらの経営判断となります。無理をして共倒れになるよりは、早めにプロに査定を依頼し、「今の自分の物件にいくらの値がつくのか」という客観的な指標を持つことが先決です。

逆境をチャンスに変える経営判断の極意

2016年からこの業界を見てきて、成功し続けている人に共通しているのは「損切りが早い」ことです。赤字物件をずるずると持ち続けることは、機会損失という目に見えないコストを払い続けているのと同じです。100万円赤字を出して撤退するのか、100万円手元に残して売却するのか。この200万円の差は、次の事業を立ち上げる際の大きな原動力になります。

赤字は決して「失敗」ではありません。その場所で民泊を運営し、許可を取り、ゲストを迎え入れたという経験と実績は、確実にあなたの血肉になっています。その「資産」を、より活かせる誰かにバトンタッチすることは、立派な経営判断です。自分の物件を卑下することなく、プロの目で正当に評価してもらうことから始めてみてください。

最後に

民泊の赤字運営は、精神的にも肉体的にもオーナーを追い詰めます。しかし、出口は必ずあります。廃業という名の消失を選ぶ前に、譲渡という名の再生を検討してみてください。あなたがこれまでに投じた資金と情熱を、少しでも多く回収し、次のステップへ前向きに進むための方法は必ず存在します。

民泊の売却や事業譲渡、特に赤字からの出口戦略を検討されるなら、旅館業・民泊特化のM&Aマッチングサイト「ミンパーク」にご相談ください。ミンパークは、現場を熟知した不動産会社とM&Aのプロフェッショナルが共同で運営しており、あなたの物件の「隠れた価値」を最大限に引き出すお手伝いをします。

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