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2026.02.01

民泊の査定方法と価値の正体:相場に惑わされないための高値売却実務

民泊物件をいざ手放そうと考えたとき、真っ先にぶつかる壁が「自分の物件は一体いくらで売れるのか」という査定の問題です。2016年から現場で泥をすすりながら運営してきた身からすると、民泊の査定は、一般的な不動産査定とは全くの別物だと断言できます。単なる「築年数」や「立地」だけで判断するのは、運営の実態を無視した素人のやり方だと言わざるを得ません。

ぶっちゃけトークをさせてもらうなら、不動産会社が持ってくる「近隣の取引事例」なんて、民泊の事業価値の前ではほとんど参考になりません。民泊の査定は、そこから生み出される「収益」と、あなたが苦労して取得した「許可」、そして積み上げた「レビュー」という3つの軸で決まります。ここでは、買い手が何を基準に財布の紐を緩めるのか、現場の一次情報を基に、損をしないための査定ロジックを深掘りします。

民泊査定の基本構造:3つの評価軸を理解する

民泊の事業譲渡(M&A)において、査定価格は主に以下の3つの要素を組み合わせて算出されます。これを理解しておくことで、買い手の不当な値引き交渉を論理的に跳ね返すことが可能になります。

評価軸 具体的な内容 査定への影響度
収益還元価値 直近の営業利益 × 2〜5年分 極めて高い。稼働実績が価格のベースになる。
コスト積み上げ価値 内装費・家具・許可取得にかかった実費 赤字物件や立ち上げ直後の物件で重視される。
無形資産価値 レビュー評価、アカウントの強さ、許可の希少性 最終的な価格を数百万単位で上乗せする要因。

現場の肌感覚として、最も強力なのは「収益還元価値」です。結局のところ、買い手は「投資した金を何年で回収できるか」を計算しています。しかし、ここには落とし穴があります。あなたが自分で清掃をしたり、メッセージ対応をしたりして「人件費をゼロ」として計算している利益は、査定の段階では「外注した場合のコスト」を差し引いて再計算されるリスクがあるという視点も必要です。

収益還元法の裏側:「営業利益 × 〇倍」の〇に入る数字の正体

民泊M&Aの査定で最も多用されるのが「営業利益(EBITDA)の〇年分」という計算式です。この「〇」の部分は、物件のスペックや市場環境によって変動しますが、一般的には2〜5年が相場となります。

  • 2年(24ヶ月):地方物件、賃貸借期間が短い、レビューが低い、または赤字気味。
  • 3年(36ヶ月):都市部の標準的な物件。運営が安定しており、一定のレビュー評価がある。
  • 5年以上(60ヶ月):一棟丸ごと、旅館業許可、自己所有物件、または圧倒的な高収益物件。

「たった3年分か」と思うかもしれませんが、民泊は流行り廃りが激しく、プラットフォームの規約変更一つで売上が変動するハイリスクな事業です。そのため、買い手は短期間での回収を望む傾向にあります。ここで価格を釣り上げるコツは、将来の収益予測をいかに「確実なもの」として提示できるかです。例えば、半年先まで予約が一定数埋まっているエビデンスがあれば、この「倍率」を強気に交渉する材料になります。

コスト積み上げ法:立ち上げ直後の物件を救う査定

オープンして間もない物件や、一時的な赤字に苦しんでいる物件の場合、収益還元法を使うと査定額がゼロ、あるいはマイナスになってしまいます。そんな時に使われるのが「コスト積み上げ法」です。

コスト積み上げ法は、あくまで「これだけの投資が既に済んでいる」という事実を評価するものです。中古の家具や家電の価値は減価償却で安く見積もられがちですが、民泊実務においては「即営業可能な状態」に価値があるため、単なる中古品価格以上の評価を求めるべきです。

査定書を作る際は、以下のコストを漏れなくリストアップしてください。

  1. 内装工事費、エアコン取付、照明器具などの設備投資。
  2. ベッド、家具、家電、リネン類などの備品購入費。
  3. 旅館業・民泊許可取得に伴う消防設備費や行政書士費用。
  4. 立ち上げ期間中の空家賃や仲介手数料。

ぶっちゃけ、ここを適当に管理しているオーナーが多すぎます。領収書や投資明細を整理しておくだけで、査定額に数十万円の差が出ることはザラにあります。買い手に対して「一から自分で作るよりも、これを買った方が安くて早い」と思わせるのが勝ち筋です。

レビューとアカウントの価値:金で買えない資産をどう値付けするか

現場を知る人間なら誰もが理解していることですが、民泊において「星4.9・レビュー300件」のアカウントは、数千万円の価値を生む打出の小槌です。新規でアカウントを作って、ここまでの評価を積み上げるには、最低でも2〜3年の歳月と、一分の隙もない運営が求められます。

しかし、査定の現場では、この「レビューの価値」が過小評価されがちです。 「アカウントは譲渡不可だから価値はない」という買い手の言い分を真に受けてはいけません。法的な名義変更のハードルはあっても、実質的にそのレビュー実績を引き継ぐ方法があるのなら(例えば株式譲渡や運営代行のスキームなど)、それは立派な査定加点要素です。 「この物件を買えば、初日から満室が狙える。新規物件なら軌道に乗るまで半年は赤字だ」という理屈を突きつけ、無形資産料(のれん代)として査定に乗せるべきです。

査定額を下げる「リスク因子」を事前に潰す

査定額を上げる努力と同じくらい重要なのが、査定額を下げられる「マイナス要因」をあらかじめ排除しておくことです。買い手は必ず「粗探し」をしてきます。

  • 近隣トラブルの履歴:過去に警察を呼ばれた、近隣から内容証明が届いた等の履歴は、査定額を大幅に毀損します。解決済みであることを証明できるようにしましょう。
  • 消防・行政の不備:最新の消防点検を受けていない、避難経路が物置になっている等の不備は、即座に「修繕コスト」として査定から差し引かれます。
  • OTAの低評価・キャンセル率:直近のキャンセル率が高いアカウントは、リスティングの表示順位を下げるため、将来の収益性を疑われる原因になります。
  • 賃貸借契約の期間:残りの契約期間が1年を切っているような物件は、退去リスクが極めて高いと判断され、査定額は二束三文になります。

現場の裏技として、査定前に一度「徹底的なプロ清掃」を入れることをお勧めします。査定員も人間です。現地確認に来た際に、埃一つない清潔な空間と、手入れされた設備を見せるだけで、「このオーナーの管理なら、目に見えない部分も安心だ」というポジティブなバイアスがかかります。

正しい査定依頼のタイミングと相手選び

「いつ査定を依頼すべきか」という問いに対して、私は「今すぐ」と答えます。売る気がなくても、自分の事業の市場価値を知っておくことは、日々の運営の質を劇的に変えます。赤字だからといって放置すれば価値は下がる一方ですが、価値を知れば「あとレビューを30件増やせば、売値が100万円上がる」といった具体的な目標が見えてくるからです。

ただし、依頼する相手を間違えてはいけません。一般的な街の不動産屋に民泊の査定を頼んでも、彼らは「坪単価」でしか見られません。民泊の査定は、宿泊市場の動向、条例の推移、そしてOTAのアルゴリズムを理解している「専門家」に依頼すべきです。

また、複数の査定を取ることも重要ですが、単純に「一番高い査定額を出したところ」が良いわけではありません。その根拠が曖昧な高値査定は、売却活動を長期化させ、最終的に相場以下の叩き売りを招くリスクがあります。論理的で、現場の痛みを理解している査定こそが、信頼に値します。

最後に

民泊の査定は、あなたがこれまでゲストのために流してきた汗と、トラブルに立ち向かった勇気を数値化する作業です。単なる事務的な計算で終わらせてはいけません。立地が悪くても、清掃やホスピタリティで高単価を実現しているなら、それは立派な事業価値です。自分の物件を誰よりも信じ、正当な根拠を持って査定に臨んでください。

民泊の正確な査定と、納得のいく売却を実現したいなら、旅館業・民泊特化のM&Aマッチングサイト「ミンパーク」にご相談ください。ミンパークは、現場を知り尽くした不動産会社とM&Aのプロフェッショナルが、あなたの物件の「真の価値」を以下の3つの強みで見極めます。

  • 全面的なサポート体制:物件の売却プロセスを一貫してサポートします。市場調査から、民泊特有の「のれん代」を考慮した適正な価格設定、契約締結まで、専門家が手厚く伴走します。これにより、オーナー様は不安を解消し、自信を持って取引に臨むことができます。
  • 幅広いネットワークと信頼性:独自のネットワークを活用し、あなたの物件の価値を正当に評価してくれる信頼できる買い手を迅速にマッチングします。多くの成約実績が、あなたの資産を守り、最高の結果を引き出します。
  • 継続的なフォローアップ:取引が完了した後も、税務や次の投資に関するアドバイスなど、長期的な視点でお客様を支え続けます。一度の取引で終わらない、あなたのビジネス人生のパートナーであり続けます。

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